December 10, 2018

【PR】

巡視船艇・航空機の老朽化

  海上保安庁の巡視船艇の現状
海上保安庁では鋼船(大型巡視船など)の耐用年数を25年、軽構造船艇(巡視艇など)の耐用年数を20年と定めています。しかしながら予算の関係上、耐用年数通りの更新はできず、平成20年12月1日時点で就役している巡視船115隻のうち47%、巡視艇230隻のうち21%が耐用年数を超えています。この数値からわかるように、建造費が高い巡視船の老朽化が進んでいます。ちなみに近年の大型巡視船(PL)の建造費は1隻55億円前後、ヘリコプター1機搭載型(PHL)だと100億円弱です。建造費の安い(約4億円)中型巡視艇(CL)は積極的な更新が行われています。

このような状態を招いた主な原因は、1977年に発効した排他的経済水域200カイリ等を定めた新海洋秩序にあります。これにより海上保安庁の担当海域が領海12カイリから排他的経済水域200カイリに大幅に増えたため、それに対応するヘリコプター搭載型大型巡視船(PLH)や大型巡視船「しれとこ」型28隻、中型巡視船(PM)「なつい」型14隻、大型巡視艇(PC)「むらくも」型23隻などが短期間に整備されました。これらの巡視船艇が一気に耐用年数を迎えてきたため、その更新が問題になってきたのです。しかしながら建造の予算は一気に増えることはなく、耐用年数を超えた船が増えていきました。

新海洋秩序に伴う警備救難業務用船の増減
1977年 1982年 増減
ヘリコプター搭載型大型巡視船
PLH 0 5 +5
大型巡視船
PL 10 37 +27
中型巡視船
PM 57 47 -10
小型巡視船
PS 24 19 -5
大型巡視艇
PC 44 57 +13
中型巡視艇
CL 155 163 +8
小型巡視艇
CS 8 0 -8
総数 298 328 +30
更新の予算がなかなか確保できないため、海上保安庁では耐用年数が過ぎても5年間は運用する方針を定めています。海上自衛隊の旧「しらせ」のように耐用年数を迎えてすぐに退役させるのとは大違いです。

  船艇老朽化問題の対策
このような現状を打開するため、工作船対策巡視船の整備が一段落した平成18年度より巡視船艇・航空機等の緊急整備として予算が計上され、巡視船艇の建造費が平成17年度の約103億円から約271億円(平成20年度)と2倍以上増額されました。これにより巡視船艇の新造ペースが一気に早まり、建造隻数も年10数隻から「はてるま」型PLや「とから」型PM、「はやぐも」型PCなど年30隻前後と約倍増しました。

また、新造に多額の予算がかかるヘリコプター搭載型大型巡視船については、平成21年度から順次耐久年数を延長する工事を行い、新造に比べて半額程度の予算で、耐用年数を15年延ばすことにしています。2013年現在では「そうや」を含めて4隻が耐久年数延長工事を行うこととなっています。

巡視船「そうや」
耐久年数延長工事適用第1号となる「そうや」
そのほか、老朽化していた油回収に関わる船艇を代替船を建造せずに全て退役させたり、民間委託が進んでいる航路標識業務を行う船艇を退役させたり、巡視艇に区分変更するなどして警備救難業務船艇の整備を集中して行っています。

  航空機の老朽化問題と対策
航空機も船艇と同じく新海洋秩序発足に伴い整備された航空機の老朽化が問題となっています。固定翼機ではYS-11型やビーチ200型、回転翼機ではベル212型が老朽化してきています。その対策として、固定翼機は、ビーチ200型の後継機としてその改良型であるビーチ350型が平成8年から導入されてきました。また残りのビーチ200型とYS-11型は、平成21年から就役しているボンバルディアDHC-8-315で代替されています。

回転翼機については、ベル212型の後継機として、南方用にその改良型であるベル412型が導入され、北方用にシコルスキーS76C型が導入されてきましたが、どちらも全てを代替するには至らず、平成20年からアグスタウエストランドAW139型が導入されています。しかしながら、これらの後継機はプロペラの折りたたみ機能の問題などからPLHには搭載されておらず、新たにオプションでプロペラの自動折りたたみ機構を装備することができるシコルスキーS76D型が導入されることとなりました。この機体が今後PHLに搭載されていくと思われます。ただPLHに搭載するにしても、初期に建造されたPLHは、ベル212型に合わせた格納庫のサイズになっており、後継機を搭載するには改修が必要だといわれています。

また現時点でベル212型の後継機が4機種にも上っており、多機種化のため整備コストが上がるなどのデメリットが生じています。

また東日本大震災の被災により、航空機が減勢しており、代替機の導入も課題となっています。

ベル212型 AW139型
後継機が問題となっているベル212型 ベル212型の3機種目の後継機AW139型

Previous «
Next »

【PR】

最新情報

人気のフォト


人気の記事